5月の講義「食の逆参勤交代が日本を変える」で、「食は縁と運と恩」と話しました。食の熱中小学校では、生徒同士や全国の生産者との良い「縁」が広がり、その縁は皆様に良い「運」をもたらし、それに対して現地ツアーで生産者に「恩返し」をすることが大切だという意味です。普段出会わない人と出会い、普段行かない場所に行き、新たな食の価値観に触れることが、単なるグルメ教室を超えた本学の魅力だと私は信じています。 教頭 松田智生
【第3期生】募集開始!
第3期:2024年10月~2025年3月 講師紹介と日程は→こちらから
募集要項と申し込みは→こちらから *9月25日第2期最終座学(ピーター・バラカン先生)は、オープンスクールとしますので、検討中の方などどなたでも参加できます。
【新着ご案内】食の熱中小学校特別企画
①9月2日:第2回食の熱中小学校「美食倶楽部」開催!
詳細及びお申込みは→こちらから
②11月9日:高台庭園での Garden Party 文化祭開催! 詳細及びお申込みは→こちらから

座学:6月26日(水)19時 ユビキタス協創広場CANVAS
講師:若宮正子先生 ITエバンジェリスト
テーマ:「マーちゃんの食紀行」
私のような80 歳より上の人間というのは、食に対する受け取り方が若い人とは全然違うんです。小学校時代が戦争中で、私は当時東京に住んでいましたが、学童疎開で長野県の鹿教湯温泉という山奥に連れて行かれました。もとからあまり農作物ができる土地ではなく、子供達が 100 人も来て村のお米を食べるのでなくなりそうになりました。最初はご飯の中に大根を混ぜていた。これはお腹に貯まりません。それも尽きて今度は大根の葉っぱを混ぜてやっとお茶碗一杯になっていました。それも足りなくなるとご飯がお粥になりお粥もだんだん薄くなる。本当にひもじい時代を体験しました。
学校給食もなく、アメリカからスキムミルクが送られて来ていました。来たはいいが冷蔵庫もない時代だから腐っていて、それでもそれを溶かして牛乳みたいにして飲んでいました。腐って臭いがすごいので鼻をつまんで飲みましたが、誰一人お腹を壊すこともなく、それが貴重なタンパク源になっていた、そんな時代でした。物資が届けばまだましで、船なんて簡単に沈められるわけですから結局届かなかったものもあったと思います。そんな経験から、食というのは今もすごくありがたいものであり、ある意味厄介な一番重要なことだと考えています。

ここから駅弁の話です。私は列車が好きで、飛行機でないと行けないところ以外はなるべく鉄道で行って駅弁を楽しんでいます。でもこの頃はなかなか駅弁も減ってきていますね。食べ物が総じて美味しいところは北陸、駅弁も北陸は美味しいです。中でも金沢は旧城下町の伝統的文化から味付けも伝統的で、いろいろ工夫が施されていて、やはり違うなと思います。北陸生まれの友人が、東京はかっこよくていいけど食べ物のレベルが違うからやっぱり北陸の方がいいと言います。自分たちの食にすごくプライドを持っていますね。駅弁ではないですが金沢駅の「駅の蔵」という食堂もぜひ行ってみてください。
今庄駅の駅弁「北陸めぐり」は小さなイカの煮漬けとかとても具材の使い方が美味しい。それから富山の射水もなかなか食べ物にうるさいところで、この「あんしん弁当」はいろいろな食材が入っていてすごく楽しいですね。福井はやっぱり焼き鯖寿司ですね。冷蔵庫もない時代、日本海で獲れた鯖を関西圏に届けるために、鯖を塩漬けにして、ぐるぐるっと巻いてそれをしょって運んでいった。すると京都に着く頃にはちょうど鯖に塩がのってお酢で洗うとよい加減のお寿司ができた。そうやって京都では鯖寿司が食べられた。これが鯖寿司の由来です。

芦原温泉は温泉地で旅館が多くて、旅館の料理が美味しかったですね。
関西ですが、山陰線の和田山駅だったか確実ではないですが、卵と鮭と沢庵、このお弁当の3 大おかずがそろっている、これぞ典型的な昭和のお弁当で。沢庵が出てくるのって嬉しいなぁって思います。
山口県は、特にかまぼこですね。お酒の肴はかまぼこにされたらいいと思います。
京都では京都丹後鉄道の宮津駅で食べたお弁当もすごく美味しかったし、忍者の里の三重県の伊賀上野駅も個性を生かしたその町らしい食事をいただきました。
高知の四万十市では、駅弁ではないですがその土地の料理で、例えばイカの足が出てきたりして、楽しくて美味しかったです。私は高知市の町がすごく好きで、高知はスイーツの店が多いのと、お言う寿司のテイクアウトが面白くて、何を入れましょうかって聞かれて、じゃあエビとあれとあれととパックに詰めてくれて、それで消費税込みでたったの770 円です。冬も寒くないし、隠居したら高知に住みたいと思うぐらいです。
過去を振り返るために学童疎開の時の鹿教湯温泉にも行ってみました。当時の村長さんの家が亀屋旅館で、そこに泊まりました。村長さんが。食べ物はないけど、と言ってオルガン弾いてくれた話を思い出しました。
海外の話もさせてください。私は庶民的なのも好きで、イギリスではB&Bをよく利用していました。朝のパンが6枚で1パックになっていて、ちゃんと卵料理もあるので2、3枚は食べるんですがそれ以上は食べられず、そうすると、うちの料理はまずいのか、それともお腹や体の調子が悪いのかと宿主に気にされて、日本人は身体も小さいし2、3 枚程度なんだというと不思議がられたりして、なかなか理解されませんでした。
スコットランドの民宿では、早く着いて、子供達と一緒におやつを食べましょうと言われたので待っているとなかなか出てこない。子供達の勉強が終わるまでおやつは出せないからと言うんです。ご主人が大工で、この国では大工の子どもは大工になるのが普通だけど、勉強すれば推薦枠で奨学金がもらえる大学もある。だから頑張って勉強しなさいと言っている。日本は既に子供達にがちがちに教えるのはどうかという議論があるぐらいでしたが、ある時日本の教育の実情がイギリスやヨーロッパの国で報道されて、日本には塾があるけどこの国にはないから親が教えるしかない、それで可哀そうに子供達は親からノルマを課せられ勉強させられておやつがなかなか食べられないでいました。

乗り物では船が好きです。イギリスのオックスフォードからウィンザーまで1 週間かけて下るツアーでは、10 人乗りの船で父ちゃんが船長で母ちゃんがパーサー、姉ちゃんがコック、兄ちゃんがサードッサー、お客も4 人でポーツマスから来た親子とジョージという名のお祖父さん。コックの娘さんはフランスで料理を修行してきたそうで、フランスで修行したって言っても学生寮の食堂かもわからないわよなんてポーツマスから来た子が意地悪を言ってましたがそれなりに美味しい料理が出されました。ただ、台所にこの料理本が置いてあって、一生懸命この本をめくりながら毎日作ってくださったみたいです。ジョージは年寄りだから肉を食べやすいように薄く切ったのが間違えて私のところに並んでしまったこともありました。家庭的で楽しかったですね。
ヨーテボリからストックホルム行くのに乗ったフェリーは結構お値段もしましたが食事もなかなかのものでした。大きな船だと夜もサンドイッチなんかがあっていつでも何か食べられます。それから、かつてあった旧東ドイツ、このロシアの衛星国に1人で行く機会がありました。一応一流のホテルに泊まれて、朝食が 8 ユーロだったかの範囲で好きなものをとって会計に持っていくしくみだったのですが、持っていったらこれじゃあ 7 ユーロにもならない、もっと取ってきなさい、と言うんです。周りの人をよく見たらパンを開いてそこにハムなどの具材を挟んでいるのを見てそんな習慣がなかったのでなるほどと思いました。お弁当にするのですね。ドイツは東でもロシアとは違ってやはりちゃんとしているなと思いました。
あとは屋台が好きで、屋台で美味しかったなと思うのはニュールンベルクです。ビールの屋台みたいなのがあって、カリカリに焼けたソーセージがなんとも言えず美味しいですね。ビールがもう一杯飲みたくなります。これも思い出に残っています。
デンマークは、おやつをよく食べます。オフィスの端にコーヒーや紅茶を入れる湯沸かし器があってそこにおやつも置いてあって、仕事中でも食べていいと言う。それでいいアイデアが出るんだったらそのほうがいい、その人が一番アイデアが出やすいようにしてあげるのが職場の務めなのです、と言われ、当時日本にはまだそういう発想がなかったのでびっくりしましたね。ただ、トークショーみたいなのをした時に、その会場にもパンみたいなおやつがたくさん並んでいて。私が一生懸命話している間むしゃむしゃ食べているので気になりましたけど、どうもこの人たち、夕飯までにお腹が空いてしまうらしいですね。

また私はニュージーランドが大好きで、 毎年冬に行っていました。気候も地形も日本に似ていて、清潔さとかいろいろな面でも安心できます。宿泊はもちろん民宿で、放し飼いの牛を見ながら食事をします。泊まると遊びに来てくれる子供達がいたりします。その子供達の父親は日本で英語の先生をしながら柔道を教わってその後ニュージーランドに来たイギリス人の男性で、背中が痛いと言っているうちに気がついたら背中にガンができていて手遅れで亡くなってしまった。奥さんは日本人で子供を連れて日本に帰ってきなさいと実家のご両親に言われたのですが、子供たちのためにニュージーランドで頑張りますと言い切って頑張っています。村の人たちもその心意気に感動して日本人が来ると彼女たちを呼んでいるんです。こちらもとても嬉しかったですね。
ニュージーランドのネルソンの民宿に泊まったときは、宿主の息子さんがハンティングに行っていて、ご飯にしようかどうしようかと悩んでいたところを息子さんが今日は獲物があったよとニコニコして帰ってきた。 でもこれは今日食べるわけにはいかないんだと。息子があとで捌くんだなって。動物を捌けるのってちょっと怖い気もしましたが面白かった。
船で世界一周するピースボートというのがあって、長旅を楽しませるためにお笑い芸人やタレントの出し物があるんですが、なぜか私に、神戸からシンガポールの間で講演と称して2 回ぐらいお話をして、あとは私のExcelアートのワークショップをやってくれという依頼が来ていまして、まあ私の食と旅、こんな感じで一生行こうなんて思っています。


Tour8: 和歌山県高野町・かつらぎ町
引率:山田玲子先生
2024年7月13日(土)〜15日(月祝) 2泊3日
弘法大師・空海によって開かれた世界遺産、高野山。仏教とともにある日本古来の伝統食 精進料理。今回のツアーでは、精進料理をはじめとする高野山にゆかりのあるさまざまな食材を味わっていただきました。
また、精進料理をいただくだけではなく、実際に調理してみることで、日本の伝統の食文化に触れていただきました。食事以外にも、歴史ある高野山のお寺での宿坊体験に奥の院や金剛峯寺の参拝など、世界遺産 高野山を存分に満喫していただくツアーとなりました。
参加者の声:劉越さん
7月13日から15日の2泊3日で、高野山ツアーに参加しました。
初日は新大阪駅に集合し、初桜酒造の酒蔵見学と胡麻豆腐作りを体験しました。酒造見学では冷えた日本酒を飲み比べ、「般若湯」という唯一寒冷の高野山で修行される僧侶たちが一杯飲んでよい特別な日本酒も味わいました。夕食は宿坊で精進料理をいただき、写経体験で心を落ち着けました。精進料理は素材の味を活かし、食材の有難さを感じました。

二日目は朝のお勤め後、現地ガイドの案内で奥の院や金剛峯寺、大迦藍を参拝しました。特に奥の院の御廟では、空海が今もなおそこに生き、人々の幸せを願い瞑想し続けていることに感動。また、壇上伽藍に象徴される学問への追求や一の橋から御廟までの約2キロの道のりに凝縮された日本の戦国時代の歴史などには震撼とロマンが溢れていました。その後、高野山社会福祉協議会で伝統工芸の宝来づくりを体験し、山田玲子先生の精進料理レシピで調理実習を行いました。かつらぎ町の夏野菜や果物をふんだんに使い、特に桃の白和えが贅沢でした。紀州かつらぎ熱中小学校の皆様との交流も楽しかったです。

最終日は朝のお勤めと朝食後、丹生都比売神社を参拝し、道の駅でお土産を購入して新大阪駅で解散しました。
今回は、9名の参加者は東京や名古屋から集まり、初対面とは思えないほど和気あいあいとした雰囲気でした。梅雨時期でしたが、団員の晴れパワーで雨に濡れることもなく、高野山の美しい自然と空気、かつらぎ熱中小学校の皆様の心からのおもてなし、精進料理を通じた食と栄養の学び、空海が持ち帰った仏教が日本の歴史と文化への深い影響など自然、歴史、人情、食といった様々な体験が詰まった2泊3日のツアーは、代えがたい刺激と学びに満ちており、心に深く刻まれました。
紀州かつらぎ熱中小学校の皆様、中谷さん、大家さんに本当に心から感謝したします。

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今後の現地実習のスケジュール
*価格、日程など変更になる場合もございます。最新情報は下記webにてご案内しております。
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① 福井県坂井市 2024年9月20日(金)~9月22日(日) 2泊3日 豊穣のめぐみ食材魅力ツアー
② 高知県須崎市・中土佐町・土佐市・仁淀川町 2024年9月21日(土)〜23日(月)2泊3日 ローカルな食文化と魚に出逢う「どっぷり高知旅」第2弾!
③ 三重県伊勢市・多気町 2024年9月27日(金)〜9月28日(土) 1泊2日 三重県多気町農村ワンダーツアーごちそう留学「秋編」
④ 富山県魚津市2024年11月22日(金)~24日(土) 2泊3日 11月下旬は、ぶり・カニをはじめとした豊富な食材、味噌の寒仕込み、昆布養殖など、富山・魚津の豊富な魅力が出揃うベストタイミング。稀な地形が農林水産物にどのような特徴をもたらしているのか。山や海の恵みを味わい、熱い職人の方々から食文化や歴史を学ぶツアーです。
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事務局より:
6月29-30日に米国シアトルで開催されたジャパンフェア2024。出展・ステージで参加した熱中グループでしたが、熱中小学校としても食の熱中としても極めて実りの多いイベントになりました。関係者各位に御礼申し上げます。
夏本番。とはいえ各地とも、毎日の酷暑・豪雨でなかなか「夏を謳歌」する、という感じでではありませんね。そのような気候の中、生徒の皆さまは元気よく現地実習に取り組んでいただいています。是非9月以降のプログラムへのご参加をご検討ください。

「熱中通信第4号」発行:食の熱中小学校事務局(一般社団法人熱中学園内)
公式サイト:https://shoku-no-necchu.com/
Mail to:hello@shoku-no-necchu.com
