食の熱中小学校第3期に入学おめでとうございます。熱中小学校は「縁×運×恩」が循環する大人の学び舎です。ここでは受講生同士、現地の生産者など、普段出会わない人との新たな「縁」が生まれます。だから皆さまは「運」が良いのです。その運に対しては「恩返し」をしましょう。具体的には食材の購入や現地ツアーの参加、さらに継続訪問することです。ここでの学びを活かし、自らの殻を破り、食と地域に貢献しようではありませんか。
教頭 松田智生


10月30日、東京の株式会社内田洋行本社ビル「ユビキタス協創広場CANVAS」にて、第3期入学式が執り行われました。校長 柏原光太郎先生による式辞と入学証書授与があり、新入生代表として市原由貴さんと、継続入学生代表代表として 網 紀子さん・岡田一子さんの3名からご挨拶をいただき、 教頭 綛谷久美先生閉式のお言葉で締めていただきました。第3期の充実した学習に向けてワクワク感が高まる入学式となりました。



座学:10月30日(水)19時 ユビキタス協創広場CANVAS
講師:藤野英人様 レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役役社長
テーマ:「「食」と地方-日本の魅力と成長力」

食の熱中小学校の皆さんの前でお話をできることをとても楽しみにしていました。富山県生まれで、富山県を盛り立てるということで富山県成長戦略会議のメンバーにもなっています。気に入っているキャッチフレーズは「富山県の幸せ人口1000万人」です。富山県は自分だけじゃなくてよその人を幸せにすることをコミットして1000万人を幸せにする。かなりぶっ飛んでますが、何か変えたいと真剣に思う、変な人がいることが大事です。そして、富山県の人口100万人の1%の人が夢中で変えようと思ったら、1万人の人が情熱をもってやれば絶対に変わる。それを楽しんで喜んでワクワクしてやったら成果が上がると主張しています。食の熱中小学校に入学するような人も多分変な人、何かを変えたい人たちなんだろうなと思いながら今日来ました。そういう変な人が僕は大好きです。
ワコールに勤めて日本で一番ブラジャーを売った母からは、仕事とは喜びであるということを学びました。すごく絵が上手でお客さんと会うと1分ぐらいで似顔絵を書いて、商品が売れたあとそのお客さんの名前と雑談の内容を全部手帳に書いていました。記録した内容を覚えていて、そのお客さんが次に店に来ると話の続きをするのでお客さんが喜ぶ。もちろん並外れな努力はしていたのだけど、それを喜んでワクワクしながらやっていたのが成果につながったのだと思います。この母の行動を通じて本当に私はかなり深く、働くことの本質を学ぶことができたと思います。
私は日経平均10万円時代がやってくるであろうと予測しています。日経平均10万円時代、これは10年後ぐらいですね、理由の一つは日本の大企業が変わりつつある、日本の大企業が業績と株価を上げることに熱心になってきたということがあります。今から10年前の2014年に経済産業省が公表した報告書である伊藤レポートが出てきて、当時のメンバーが今40代、50代になっていて実は日本の経営のトップの中心選手になってきています。成長するんだ、株価を上げるんだ、業績を上げるんだ、給料を上げるんだ、という気持ちの強い人たちが今日本のリーダーシップをとっているのが大事なことです。そしてトップの若返りが進んでいます。

世界のお金持ちが日本に来たいのは、日本の文化や食文化に対する憧れがあるからです。そして、現場力のある若者や起業家が増えてきた。日経平均が上がり、株が上がり、土地も上がっていく中で、お金を握ったまま何もしないと結果的にお金が小さくなるので、挑戦したり投資をしたりする人としない人の差が大きくつくのがこれからなんじゃないかなと思います。
地域の話で大事なのは、地域で勝てるビジネスモデルは日本や世界でも勝てるということです。たとえばニトリは札幌の郊外で大成功して北海道や東北、日本中に店ができましたし、ホームセンターのコメリは新潟県三条で大成功し隣の富山や長野にも広がりました。カレーのCoCo壱番屋は愛知県清洲、メガネのJINSは群馬県の前橋、ファーストリテールのユニクロは山口県の宇部市、しまむらはさいたま市、セリアは岐阜県大垣市と、田舎で勝ち残った会社は結構成功しています※。意外と東京中心なのではなく地域で走ったら結構勝てる。地域創生で見落とされがちですがとても大事な視点です。東京ではなく他の地域に目を向けよう、地域のリーダーこそ他の地域に行きましょう、と僕は言っています。
オーベルジュのように、食は今、ものすごく重要な地域資源となっています。柏原校長も大好きなレヴォというオーベルジュレストランが富山県にあります。行く途中に6頭もイノシシに出遭うような、車でも命がけでいくようなところです。谷口シェフが地域リーダーとなり人格と技術と、信頼して彼についてきたスタッフたちがそこに集まって、全力を投じて創造空間を作っているからこそ、ゴ・エ・ミヨというフランスのレストラン評価サイトでも期待できるオーベルジュ日本一になったり世界で最も期待できるレストランの一つになったんですね。
女性も含めてダイバーシティはすごく大事なことですが、大事なのは個別化です。一般的にではなく、人はそれぞれ違うものを望むということを考える習慣にしています。私はお酒が飲めない、つまり下戸なのですが、2019年6月にFacebookで「ゲコノミスト」というグループを立ち上げました。お酒なしで楽しめるレストランや、アルコールではないけどお気に入りのドリンクや、アルコールハラスメントへのスマートな対処法等の情報を共有しています。

2019年にゲコ経済が日本を良くする『ゲコノミクス 巨大市場を開拓せよ!』という本を出しまして、偶然コロナがやってきて、一時期、飲食店でお酒の提供に制限がありましたのでよく売れました。調査したら、お酒が飲めない人の率は、やめてほとんど飲まない人を合わせると55%! 実は飲まない人の方が多いんです。レストランは飲めない人にとって場が提供されていないから行かない人が多いとして、ゲコノミスト対応ビジネスは新たな成長産業であり、ゲコノミクス市場規模は推定3000億円以上になるんです。実際に、富山県利賀村のレヴォや山形県鶴岡市のアル・ケッチャーノのような地方の予約が取れない一流レストランではちゃんと対応しています。需要の隙間を埋めるということが大事で、それを見つけて埋めてあげると大きなビジネスになるということです。ものの見方を変えるだけで目標の設定もすべて変わって大きな潜在市場が地方や食の世界でたくさん見えてくることをぜひ理解いただきたいですね。
※個別銘柄を推奨するものではありません。

現地実習レポート:「すさみの恵みを味わう旅」 安嶋 美穂子さん
まだ、和歌山県に行ったことがない!という方、初訪問を次回の熱中小学校すさみ町体験ツアーにしませんか。断然、おススメです。
私は、第3期に入学してすぐ11月2~3日に和歌山県すさみ町へ行ってきました。訪日生徒4名を含むハイブリッドツアーとなりましたが、自己紹介が終れば旅の友、ひとり参加でもすぐに仲良くなりました。移動もすさみ町内を熟知したスタッフの運転なので細い道も安心、どんどん山間へ進んで、紀州備長炭「小守窯」を訪ねました。
おひとりで木を伐り、窯にくべ、技術と根気のいる作業で焼成した備長炭は、まるで宝石のような美しい輝きの黒さです。これから焼き鳥を食べる時は、「紀州備長炭の店を探します。

すっかり煙に燻された後、エビとカニの水族館バックヤード巡りで夕食の予習をして、人気のフェアフィールドホテル&太平洋が目前に広がる絶景温泉へ。
小休止の後、すさみ町長岩田氏宅に招かれ、食べきれない程の旨味たっぷり伊勢海老鍋を頬張りました。町内の秋祭りの時期であったせいか、町長から集落ごとに伝承されている祝い唄がでれば、アメリカから優しい子守歌がこたえて、とても和やかな交流でした。

翌朝は、漁港で刺し網漁師さんから、近年の黒潮の移動によって海老や魚も移動し、転廃業を考える仲間もいるほど漁場の変化が著しいことを伺いました。そして、超特大伊勢海老のBBQ朝ごはんです。身は柔らかいのに味がとても濃く、希少かつ人気すぎて市場には出回らないため、ツアーならではの特別な朝食でした。

ここでは、もし、すさみ町訪問客に「伊勢海老を味わう朝ごはんツアー」を提供するなら』をテーマに、値段は?内容は?送迎は?と、スタッフ、日米参加者と共に考え、アイディアを出し合い、まさに熱中小学校の現地実習を体験しました。
旅の後半、災害対策で高台移転した元町営病院棟を生かした杉工房を訪ね、丁寧なご指導の下、無垢材でおひつのような「myおべんとう箱」を手作りし、旅のお土産を持ち帰ることができました。最後は、熊野詣の面影を残す街道沿いの水車小屋を訪ね、地元産新米で自ら握ったおにぎり昼食から結びの会となりました。なかには、「人生で初めておにぎり作った!」という喜びの声も聞かれ、地元の食材とともに特別な思い出となったと思います。

これだけ盛りだくさんの充実したツアーでしたが、実のところ悪天候の影響で今回のメインイベント「刺し網漁体験」は中止。しかし、思えばそれを全く感じさせないスタッフの機転とご尽力がありました。お世話になった皆さま、どうもありがとうございました。
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現地実習レポート:近郊プログラム「横浜市高台庭園での Garden Party]中山るりこさん
11月9日(土)、横浜市鶴見区で開催されたガーデンパーティーに参加しました。当日はよく晴れ、ぽかぽかと上着のいらない暖かさで最高のガーデンパーティー日和。参加者も50名を超える大盛況でした。

案内に従って小径を抜け庭園に向かうと、突然開けて広々とした芝生にガーデンテーブル&チェアーが設えられています。思いがけない光景にまずびっくり。定刻の12時少し前にはどんどん参加者が集まってさっそく飲み物を手に語り合っています。

奥の藤棚の下にはみんなが持ち寄った料理や飲み物のテーブル。前菜から各国のお料理、デザートまで多彩な料理が並び、しかもほとんどが手作り。お酒もなかなか手に入らないビール、国産ワインや各地の日本酒。そして何より、10月の授業で教わったばかりのゲコノミストのためのノンアルコールゾーンもとても充実していました。きっと誰もが満足できたはず。

炭火で焼き鳥や大粒の帆立、野菜の焼かれる焼き物コーナーがあり、庭の奥に設えられた石窯ではその場で選んだお好みのトッピングでピザが食べられ、さすが食の熱中小学校。食もエンターテイメントですね。


同じ藤棚の下のバザーコーナーには書籍や日本蜜蜂の蜂蜜などが並びQR決済ができるほか、現金の場合はおつりの代わりに小さいパックの農産物が選べるようになっていて、無人で決済できる仕組みがありました。誰もがパーティーに参加しながら販売もできる仕組み。

おいしいものを食べながら、飲みながら、たくさんおしゃべりをして交流し、また次からの授業でお会いするのが楽しみです。

今回一番学びになったのは、このガーデンのあり方そのもの。大きな桜を剪定した枝が石窯での燻製に使うスモークウッドになり、斜面を階段で降りていくと野菜の畑と日本蜜蜂の巣箱、その下に果樹園。どこで出た屑も土に還して堆肥となり、また農を豊かにしてくれる仕組み。すぐ下は車がスピードを出して走っている幹線道路なのに、ガーデンは小さな循環を持ったナチュラルガーデンなのです。たとえ素敵な庭を持たなくとも、なにか自分の暮らしでも小さな循環が作れるのではないかと考えさせられました。
会場の設えやサイン類、受付、お料理のセッティングや現場の調理係、後片付けまで、沢山の方にお世話になりました。ありがとうございました。

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事務局より:
横浜、堀田邸でのガーデンパーティは、食を楽しみ、庭を楽しみ、そして交流を楽しむ会になりました。このような首都圏近郊プログラムとして候補があれば是非ご紹介ください。
第3期が始まりました。これからも、好評の魚津市の2回目を12月に、来年1月には十勝、2月は糸魚川市、3月には萩市と、現地実習ツアーも続々と開催を予定しています。詳細はこちらからご覧ください。
突然冬が訪れ、秋がなかった年などともいわれておりますが、皆さまは秋の味覚を味わい、楽しむことはできたでしょうか?気候が不順でも、私たちは食を文化として楽しむことができていると思います。しかし、世界中には厳しい環境の中で生きるために食べている、求めている人もたくさんいます。日本ではSDGsが環境やエネルギーの課題としてとらえられているように感じますが、17の目標の1番最初のテーマが「飢餓」であることを再認識しながら、ガストロノミーを考察することも大切だと思います。

「熱中通信第4号」発行:食の熱中小学校事務局(一般社団法人熱中学園内)
公式サイト:https://shoku-no-necchu.com/
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