第9章 ドラマのような一日 ―コラボする力でタスキを繋ぐ

 2月11日、「のと復興音楽ツアー」第2回の七尾市は、ぜひ一本杉商店街でやりたかった。この商店街は周辺の方々にとって復興のシンボルであり、震災直後から炊き出し隊をやり、マルシェを毎月開催してきたのだ。

 演奏は「天地人」と太鼓のコラボ。しかし会場の「花嫁のれん館」のスペースは限りがあるため、限られた数の太鼓しか舞台に入れられない。コーディネート役の美容師の山崎さんはそれでも多くのグループの参加にこだわり、7つのチームから代表を集め「七尾太鼓スペシャルコラボチーム」という名前で比較的若い方々をそれぞれのユニフォームで参加させたいと考えた。

 観客も、半分が立ち見になること覚悟の開催だった。
 ところが始まってみれば、「天地人」と太鼓チームの熱演のおかげで立ち席でも構わない空気が会場にあふれてくる。座席はお年寄りに譲ってもらい、子供は立って生き生きと踊り出す。
 ヒロさんの津軽三味線は太鼓とのコラボがいい。「天地人」は以前、ドラム、三味線、太鼓が標準だった時期もあったようだ。
 お父さんの太鼓を聞こうと、小さなお子さん連れの家族が会場横の廊下から覗いている。外からガラスの窓越しに外から覗く人がいる。雪の中で、狭い会場なりの熱量が溜まってくる。
 山崎さんは司会役で、太鼓を叩くことはない。他にもたくさんの太鼓仲間が代表選手に声援を送っている。

 能登半島では、キリコ祭りを代表に、祭りの楽器として特に太鼓が各地で盛んで、親から子へとつないでゆく。
 皆、こんなふうに家族や友人の前で叩きたかったに相違ない。しかもプロの奏者「天地人」と一緒に叩けるなんて、そんな機会はめったにない。
 選ばれた選手を応援するベンチの選手、選抜された人の頑張り、こうして人はそれぞれ何かをつかみ、やがて修羅場も乗り越えていけるように成長してゆくのではないだろうか?
 練習、学び、失敗、そして達成感を繰りかえしてやがて我々は、優れた人たちとのコラボの世界を体験する。

 コラボできる心と力のある人達のおかげで「他力創発プロジェク」は進み、「のと復興音楽ツアー」は次の春の珠洲市「スプリングコンサート」へとタスキが渡ってゆく。

 イベント終了後に、商店街にある仮設の食堂を借り切って懇親会をやりながら、本日取材に来られたテレビ金沢のニュースに出るという情報があって、食堂のテレビをつけてもらうと、まさに今日の映像が表れた。商店街会長で高澤ろうそく店の高澤社長や鳥居醤油店の鳥居ご夫妻とさっそく乾杯! そして、なんとチャンネルを変えると別の局でも流れてきた。

 誰かが、「なんだか今日は、テレビドラマのようだなあ」と言って、みんなが笑った。

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