先日3回目となる宮崎こばやし熱中小学校へ伺ってきました。小林市は畜産、果物を含む農業が盛んで自給自足100%可能地域であること、南海トラフ地震への不安を抱える宮崎など沿岸地域の支援を担うことを初めて知りました。
発信不足! もったいない!と指摘するのは簡単ですが、現地からの発信が少ないのなら東京にいる私たちが声を上げればいいだけ。食の熱中小学校ならそれが可能です。「聞いたら伝える」を習慣化して、出会った人たちをもっと応援しましょう。私たちは声を上げていきましょう。
教頭 綛谷久美


特別なお知らせその2
第4期座学講師決定! 4月から始まる第4期。またまた豪華な講師陣がご登壇予定です。是非ご参加ください。


座学:12月25日(水)18:30~ ユビキタス協創広場CANVAS
講師:末松弥奈子様 株式会社ジャパンタイムズ代表取締役会長
テーマ:「The Japan Times Destination Restaurants 誕生の背景」
ジャパンタイムズの末松です。1968年に広島県の瀬戸内の海の目の前で生まれ育ちました。今日はジャパンタイムスで2021年から始めた、毎年10のレストランを選ぶ「Destination Restaurants」についてお話をしたいと思います。
Destination Restaurantsは日本人が選ぶ世界の人々のための日本のレストランリストです。ミシュランガイドやThe World’s 50 Best Restaurants、食べログなどのレストラン紹介サイトで疑問だったのが風土や文化的な背景まで考えたセレクションになっていないのではないかという点、もう1つは地方で値段が高いだけで低い評価になってしまうというように行った人の費用対効果での評価は客観的でなくプロの目の評価ではないのではということでした。
そんな中でジャパンタイムスが新しいレストランリストを作っていくわけです。ジャパンタイムスですから英語での発信です。海外の方がこのリストを信頼していただけるかどうかが非常に重要だと思いました。選定対象はかなり議論をした上で、口コミの多い東京や首都圏、大都市は外し、東京23区と政令指定都市を外し地域のファインダイニングにフォーカスすることにしました。

世界中で修行をしてきたシェフが地域の食材に惹かれてその地でファインダイニングを開くと、評価してくれる人は必ずしも地元の方ではなく外の方だったりします。なので、コロナの中でオリンピックが開催されることになり、オリンピックに来た人達が一つでも日本の地域に足を伸ばしてくれないかなという期待も込めてセレクションを始め、2021年に発表しました。ほかにも背景には地方創生やサステナブルなシーフードといった食材についての考え方などの多様な側面もありました。
私達は、シェフは地域の総合プロデューサーであるとよくお話ししています。例えば富山のレヴォ。器からお酒から食材から、レヴォで使うことによってそれらの価値が改めて見直される素晴らしい事例です。セレクションコミッティは、辻調グループ代表の辻芳樹さん、世界1位のフーディで知られる浜田岳文さん、そして同じく世界を食べ歩く本田直之氏さんのお三方で、このメンバーでまずは5年間続けてみようということでスタートしました。
このレストランリストをジャパンタイムスがやっていく意味ですが、2017年、言ってみれば斜陽産業である新聞社の経営に携わるようになり媒体の価値を高めていく活動として何をやったらいいかというのがスタートラインでした。


ジャパンタイムスは1897年、明治30年に創刊された日本で最も歴史のある英字新聞です。伊藤博文など がサポートしました。その頃に英字新聞はたくさんありましたが、日本人がオーナーで日本のことを伝える英字新聞がなくその最初となったのがジャパンタイムスです。西洋化していく中で大名の列の中に英国人が入ったことで生麦事件から薩英戦争が起こったような、お互いの文化的背景の理解不足や誤解をなくそうとしたことが、ジャパンタイムズ創刊の大きな判断に結びついたかと思います。
日本の新聞社全体でだいたい毎年6パーセント以上の部数が減っているという市場です。私たちも2017年からコロナの直前までさまざまな投資をしてきました。おかげさまでオンラインのメールのデイリーアップデートをしてくださっている方が56万人を超え2023年からさまざまなアジア・メディア・アワードなどの受賞歴も増えてきました。創刊から120年以上の歴史あるメディアを何とか次世代に残していきたい、そのためには日本人の方々にももっとジャパンタイムスを知っていただけるよう、サステナブルジャパンマガジンという形で日本語要約併記版も作っています。そしてDestination Restaurantsにつながっていきます。
「瀬戸内キロメートル・ゼロ」。これ私が作った造語ですが、Destination Restaurantsにつながるコンセプトです。家業でブランディングやマーケティングを手伝う中、広島の尾道で弟がやっているベラビスタ スパ&マリーナというホテルに2014年にウッドデッキができその後リノベーションを終えてからは、景色だけでなくて食にも特化していくコンセプトが瀬戸内キロメートル・ゼロです。
2013年の10月に、生まれて初めてサンセバスチャンに、料理男子の息子と行きまして、現地でフードコンサルなどをやっている山口純子さんに、男子だけが料理ができる美食倶楽部というのに連れて行ってもらい、うちの息子はそのシェフの人に料理を教えてもらうという体験をしました。この時彼女から、キロメートル・ゼロ、いわゆる地産地消のコンセプトの言葉を聞いて、それに興奮して瀬戸内一キロメートル・ゼロやろうよって弟にメールを書いていました。

この経験から、ホテルにわざわざ来ていただくにはその地域の食材にフォーカスすべきと考えるようになりました。だからお寿司でも瀬戸内海で採れる魚しか出しません。メインダイニングのエレテギアも、四国の方も含めてかなり広域を瀬戸内でくくっています。
本田直之さんとは実は20歳の時から知り合いです。辻先生も結構早くからいろいろなところでご一緒していました。そして実は柏原校長と浜田さんとは、初対面が6席しかないペレグリーノで同じ日にお会いしていました。
Destination Restaurantsのコンセプトに至る背景にはもう1つ、藻谷浩介さんとNHK広島取材班の『里山資本主義』という本との出会いがありました。私のように地方から東京に出てきて東京で働いて東京が普通になって、そこから地方を振り返るという経験は多くの方があると思います。育った時は田舎に対して魅力がないと思っていても、40代後半になって実家に戻ってくるとなぜか癒される。お魚も美味しいし、たくさんキュウリが獲れたからと獲れた野菜を玄関の前にダンボールで置いといてくれたりする。小学校の頃に当たり前だと思っていたものが、東京だと一年中トマトもあって季節の野菜という感覚が本当になくなっている。そんな自分に気づいた時にこの里山資本主義というものに出会い、ちょうどNHKプロデューサーを通して藻谷さんともご縁ができ、本に書かれた庄原の山奥や岡山の日生、真庭など私自身も時間を見つけて足を運ぶようになりました。2017年に実践者交流会というのを手弁当で作って、スタディツアーを周防大島でやりました。
里山資本主義は日本で広がり始めているけれども、これから高齢化社会であったり都市への一極集中、人口の集中、こうした社会課題は日本が課題先進国であると言われているということから、今後他の国も興味を持つと思いました。そこから、こうした活動を実践している方々を英語で発信することに意味があると思い、”日本の里山資本主義を世界の「Satoyama」へ” というコンセプトで、2018年にSatoyama推進コンソーシアムという形で始めました。東京で勉強会をしますがやはり年に1回どこか現地に行くことにして2018年には神石高原町でやりました。地域おこし協力隊の発表や地元名産の日本古来のこんにゃくの和玉の見学や酒蔵での交流会でした、2020年2月には志摩市で、伊勢志摩観光ホテルのシェフに来ていただいたり、英虞湾のカキや真珠の養殖を見に行くスタディツアーと合わせてやりました。

2019年からは海外の人の注目度を高めるためにアワードを作りました。ESGとSatoyamaの2部門を設けて企業や団体、自治体に提供するもので、ESGの方は大手企業、Satoyama部門は地方のさまざまな団体や企業を対象としていて、両部門の受賞企業が交流できるようにしています。Satoyama部門の受賞企業は、浄法寺漆のウルシネクストさん、ドラマのファーストペンギンのモデルになった山口県の萩大島船団丸さん、福島のフィッシャーマン・ジャパンや佐渡島の酒蔵の真野鶴さん、海士町の風と土とさん、松本の扉グループさん、耕作放棄地で黒毛和牛を飼育する鹿児島のさかうえさん、飛騨高山でサイクリングなどの体験や外国人の長期滞在向けの宿など提供するSATOYAMA EXPERIENCEさん、丸亀や大津、福山などでの城主体験を提供したり、文化財をビジネスに変えるNIPPONIAを運営しているバリューマネジメントさん。社名が変わりましたが庄内でスイデンテラスをやっているヤマガタデザインさん、あと焼津のサスエ前田魚店さんは皆さんもご存知でしょう。2024年は石見銀山の群言堂さんと義肢を作る中村ブレイスさん、前橋の第3セクターの前橋デザインコミッションさん、京都の和久傳さんでした。こうして自分たちの故郷で町興しに取り組む方々をジャパンタイムスとして表彰することで、日本って黒船の時もそうですが外で評価されると地元の人も評価するというのがよくあるので、そんなことにつながっていけばということで応援しています。
さらに2020年には、ジャパンタイムズ出版としては多分初のビジネス書として、それまでの活動をまとめた『進化する里山資本主義』という本を出しました。3年や5年ではできない、20年間かけて取り組まれてきた地方創生を遡ってまとめました。第二章の周防大島はほぼ私が書いています。その間も2022年にはむつ市のガストロミーツーリズムで下北半島へ、鳥取では里山×グローバル、2024年は余市で里山×インバウンドとやってきました。鳥取は三朝温泉に外国人の方が住んでいて、この時の藻谷さんのお話で衝撃的だったのが、日本の過疎と言われている地域はヨーロッパの都市からすると都会なんだと人口比率では過疎と言われるけどそこに住んでいる外国人の方々からしたらそんなことはなく、コンビニもあり、なんて暮らしやすいんだろうと言っているという話を聞くことができました。
Destination Restaurantsの都会から地域へ人が動いたり地域同士でお互いのナレッジが交流する意味は大きく、旅費もかかるし普段はなかなか行ける機会はないけれど生産者さん同士がそのきっかけを持ってくれればということで、こういったイベントを日本の各地域でやらせていただいております。正に食の熱中小学校とコンセプトが非常に近いと思います。
地域は地域のものにこだわり地域の魅力を発信していく人たちを地元の人が認めない、特に生産者さん自身がその価値をわかっていない状況を、外からも人が来るようになり評価されるようになることで、地域の人たちがプライドを持って地域の文化や食文化、風土を守っていくようになるきっかけになればという思いや背景があってDestination Restaurants を始めたわけです。

ただ、スポンサーもついたところで悩ましくもコロナのために2021年は発表会授賞式を断念し、その翌年2022年に2021年分と22年年分とを合わせて2年分20名のシェフを表彰しました。この時はビデオを撮る予定がなく予算もなかったので、さっきお話しした料理息子に来てもらってこのビデオを息子に作ってもらっていました。まあいっぱい美味しいもの食べさせてきたので、これくらいやってくれてもいいかなということで。
こうして2023年、2024年と続いてきたわけですけれども、ご承知の通り今年2024年1月1日、能登で地震がありました。私たちのリストの中ではラトリエ・ドゥ・ノトの池端隼也さんが被災しました。そして2024年の受賞シェフの1人に一本杉の川嶋亨さんがいました。5月27日がレセプションだったのですが、川嶋さんは本当にこの賞をもらっていいのかどうか悩んでいて、池端さんもやはり1月2日から炊き出しをずっとしていて、まさかこんなに復興支援に時間がかかるとは皆思っていなかったんですね。
いつまでだったら頑張れるかと思いながらやっていて皆本当に疲れていて、このDestination Restaurants の2023年までの30人のシェフたちの中にも横の連携で応援しに現地に入ったシェフもいるし、富山のレヴォの皆さんたちもお弁当を作って寄付を現地に持っていったりとさまざまな活動をされていました。そんな中この日、池端さんが皆に会いたい、5月のレセプションに能登のシェフたちを連れてっていいかとご相談いただきました。最終的に12人のシェフ達を連れて池端さん、川嶋さんたちがこの場所に来て、全国で頑張っているシェフたちとのリユニオンとなりました。それぞれの地域で頑張っているシェフたちと会うのを楽しみにしている。4年続けてきて、受賞した40人のシェフたちにとってのそうしたコミュニケーションやネットワークのためのかけがえのない場になったんだなということに非常に感銘を受けました。
Destination Restaurantsの最初の小さな一歩は、外国人が行くようになりシェフたちがサステナブルになればいいなという思いでした。そういった側面支援でこのコミュニティに貢献できればなと思っています。今年、そして、この4年間のシェフ達の料理を1冊の本にまとめました。多分また3年後に2冊目を作ることになるかなと思います。日英併記ですので、もしよかったら読んでみてください。


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次回の食材は、能登復興を祈念して、さまざまな能登の名産品を揃えています、下は、室長の山田玲子先生のリードのもと、生徒ボランティアの方々により調理されるメニューの紹介です。写真などは次号に掲載します。お楽しみに!
★フグの揚げ物 (七尾)
★粕汁: 酒粕(七尾) 味噌(鳥居) 大根 にんじん 里芋 青菜
★もろともの蕪・大根等漬物 (鳥居)
★蟹棒サラダ: カニカマ (七尾)サラダ野菜
★もろみ塩おにぎり もろみ塩(鳥居)
★味噌まんじゅう (七尾)
★試飲用 地酒: 池月(鳥居酒造) 竹葉(数馬酒造)

横浜市鶴見区の高台庭園での Garden Party 春の文化祭のお誘い
5 月6 日(火・みどりの日)12 時―16 時 【参加費 2,000 円】 (現地お支払い)
横浜市鶴見区の高台で 70 年続いた日本庭園と西洋庭園でのGarden Party です。
庭園の東、南、西は遮るものはなく風が通り、遠くに横浜みなとみらいを望む芝生を中心に定員 60 人で開催します。
お申込みはこちらから
対象は原則生徒さんですが、配偶者やパートナーの同伴歓迎です。希望の方はチケット数に反映してください。
参加費に含まれるもの:ノンアルコール飲み物、自家製ベーコン、サーモン燻製、焼き鳥など。
是非お料理または飲み物を持ってきてください。お持ちでない方はプラス 2000 円で参加
できます。なお、ピザ窯のピザ生地の用意がありますので、トッピング食材を持ってきていただけると、MY PIZA が作れます。お手製の食べ物、本、手芸などなんでも‘BAZAR’会場で販売可能です。ぜひお得意の品をご持参ください。
コンロは2台あり、焼き物をやっていただける方には炭が用意されています。台所も近いので、IHコンロやオーブンも利用可能です。鍋、釜、盛り付け用の大皿もございます。
日時:2025 年 5 月6 日(火・みどりの日)12 時-16 時
場所:神奈川県横浜市鶴見区東寺尾 6-36-11 堀田一芙
アクセス:JR 京浜東北線鶴見駅西口下車 川崎鶴見臨港バスで東寺尾停留所下車すぐ
(06,07番以外)のバスが行きますが、横浜市営バスと間違えないでください
タクシーで 900 円(ひびき橋渡ったたもと左側の家)
東横線菊名駅から川崎鶴見臨港バス鶴見駅行き東寺尾停留所下車、そのまま進
むと「ひびき橋」があり、右側手前たもとの家です。
車でいらっしゃる方は駐車可能が 3 台までなので、事前にご相談ください。
皆様の手作りの Garden Party 春の文化祭、ぜひご参加ください!

事務局より:
「食大好きな」皆さま。 正月はどのようにお過ごしでしたか?どんなものに舌鼓を打ちましたか?1年間の様々な行事の中で、食に関するユニークさはおせち料理が一番だと思います。各地で各地の文化に根差したおせちが用意されると思いますが、「豆で達者で:黒豆」「豊穣への祈り:田作り」なんて意味性は、どんどん忘れられていくのでしょう。そもそもおせちなんていう料理そのものが消えていくのかもしれません。美味しい、というのが一番大事とは思いますが、料理に意味や歴史、祈りがある、という文化は残していきたいですね。

「熱中通信第10号」発行:食の熱中小学校事務局(一般社団法人熱中学園内)
公式サイト:https://shoku-no-necchu.com/
Mail to:hello@shoku-no-necchu.com
