第64章 富山孝治さんが歩く「非効率から生まれる感動の世界」への道

 株式会社システムフォレスト代表取締役の富山孝治さんを捕まえるのは容易ではない。

 クラウドサービスを活用したシステム開発の経営、親会社である「株式会社ウフル」との関係、そして「ひとよしくま熱中小学校」を運営いただいている一般社団法人ドットリバーの代表理事として「osoto Hitoyoshi(くまりばコワーキングスペース)」の運営支援なども行っていて、熊本県人吉市で行政と連携した地域活性化に邁進している。

ひとよしくま熱中小学校のオープニングを行う富山孝治さん。2022年12月、‘くまりば‘ にて

 2016年4月に起きた熊本地震、2020年7月の豪雨災害による球磨川決壊の洪水、顧客、町の復興支援はまだまだ続いている(洪水の経緯は第56章 立山さんの「笑うグリーンに福が来る」https://www.korobocl.com/2023/09/27/56shou/、第57章 瀬崎公介さんの「海とともに 川とともに 人とともに」https://www.korobocl.com/2023/09/30/57shou/を参照)。

 今回、ドットリバーが主催する「食の熱中小学校」の人吉体験ツアーに参加した際、人吉市から宮崎県の県境近くにある大石酒造場の焼酎製造工程を見学した。随行してくれていたスタッフの方が、富山さんの故郷はあの山のもっと向こうの過疎地ですと教えてくれた。

 福岡の大学を卒業後、富山孝治さんは熊本地場のシステム会社に入社。システムエンジニアとして官公庁向けのシステム開発に従事。その後通信系ベンチャー企業を経て、2004年2月有限会社システムフォレストを設立。福岡にも支店を開き、やがて台頭するクラウドサービスに社運を賭ける。独自のスキルを武器に、コロナ禍をきっかけに各地でクラウドを活用した「新しい働き方」を提唱し講演活動も行っている。

 富山孝治さんのIT活用の目的のベースは揺るがない。

「 ITの技術は使ってもらわなければ導入した意味がありません。顧客とのコミュニケーションが図れていなかったりするだけで、プロジェクトが失敗してしまうこともあります。だから手間暇かけることを怠らず、非効率の中から生まれる感動を大切にしたい。水鳥のように優雅に泳いでいるように見えても、実は水面下で必死に足を動かしている・・・、システムフォレストはそんな会社だと思います」( ’顧客のビジネスの成功を第一に、クラウドソリューションで地元企業をフルサポート’:LISTEN から引用)

 さて、「食の熱中小学校」人吉体験ツアーのランチ会では、グリーンツーリズムの本田節さんから、おにぎりを作って被災地を訪れ「食事からは元気をもらえる」という被災者からの声を聞いた、という話があった。「食は災害という立場に置かれた人に元気を」と、食の大切さを改めて感じたそうだ。ツアーの宿泊所は本田節さんがリノベーションした「リュウキンカの郷」という農泊施設で、朝食時に本田節さんから彼女の半生のお話を聞かせていただいた。若い人たちに家庭の味を知ってから海外に行って欲しい、とJICAで海外に行く人たちの民泊のお世話もしている。この本田節さんの社会事業にも後継者が必要だ。

本田節さん(一番左手)の「リュウキンカの郷」キッチンで朝ごはん ‘いただきます’

 富山孝治さんに「食の熱中小学校」の相談に来た際、「ひとよしくま熱中小学校」の将来像としてこの地区の若い人たちが自立する為に必要なビジネスの知己を得られるような集まりを持ちたいという相談を受けた。

「ひとよしくま熱中小学校」は150人の生徒さんがいて、老若男女の啓発の場としても活発な ‘場’ としてのベースになりながらも、起業や事業継承の頼りになる集まりが欲しいとのことだった。

 富山孝治さん自身が経験した起業後の下請けからの独立の苦労やお客様のレベルに応じた対応の難しさなど、ビジネスの理論やIT等のツールに加えて体験した人ならではのビジネスの苦労と感動を学ぶ教室が欲しいということだと思う。

 地方には仕事がないという。今仕事をやっている人たちがそこに居る。しかし後継ができないということが課題だと私は思う。ITや人的なネットワークを駆使して仕事を変え続けることができる人材が育てば、やがて開ける事業継承のビジネスもあるはずだ。

 ‘非効率の中から生まれる感動の世界’ を目指す人たちに、地方の、いや日本の将来を託したいものだと思う体験ツアーだった。

富山孝治さんのインタビュービデオはこちら:

「食の熱中小学校」はこちら:

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