第63章 藤野英人さんの「好きなことにエネルギーを加えて託す未来」

 レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役会長兼社長最高投資責任者の藤野英人さんには熱中小学校の「社会科」教諭として、超多忙な中、各地で授業をしていただいている。今回、富山県高岡市に開校した「高岡熱中寺子屋」が7周年を迎え、記念講演をお願いした。個人的には昨年4月、『老いてからでは遅すぎる』の出版にあたり推薦文をお願いしたところ、多忙にも関わらず快諾いただき、さっそくPDFで原稿をお送りした。

 依頼した自分も藤野さんの本を熟読せねば失礼だと思い『ゲコノミクス 巨大市場を開拓せよ!』(日本経済新聞出版刊)『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社刊)を改めて読み直し、直後に出版された『先の先を読む思考法』も読了した。 藤野英人さんは、もともと法学部出身で法曹界を目指していたが、野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)、ジャーディンフレミング(現:JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークスを創業して投資の世界で生きてきた。

『投資家みたいに生きろ』では、「投資とは、エネルギーを投入して未来からお返しをいただく行為」であり必ずしもお金が主人公ではないと看破する。

 あれ?と思ったのは「八ヶ岳戦略」。1つのことに集中するのではなく、敢えて複数のことに取り組むという考えだ。1つの分野で完璧を目指すのではなく、5つの分野で8割の出来を目指し、その5つの組み合わせで勝負するというのだ。

『ゲコノミクス 巨大市場を開拓せよ!』では、コロナ禍で世間がお酒を飲む場を奪われた時に、お酒を飲まないご自身の立場から、お酒を飲めない人の市場創造を提案する。

 コロナ禍でパンデミックの本はたくさん出版されたが、夜の世界が変わっていくことだけではなくそこから新しい市場を感じさせる本を、なぜこんなに早く出版できるのだろう?

『プロ投資家の先の先を読む思考法』(クロスメディア・パブリッシング刊)では、「企業の今後はウェルビーイングの意味を追求し続けられるか」にかかっている、と新しい経営の姿勢を説いている。

 藤野英人さんは生まれ故郷の富山県のためにできることをいつも考えているようなのだ。

 自分には故郷があるということを確かめるようにして、富山県朝日町では古民家を集会場にし、夢を追いかけている若い人たちを応援する。

 2年前ほど前に、委員をされている「富山県成長戦略会議」の中間報告書を見る機会があったのだがとても驚いた。これは、コンパクトにまとまった日本の未来戦略書、といっても良い内容なので紹介したい。

 令和3年7月30日 富山県成長戦略会議 中間報告(https://www.pref.toyama.jp/documents/21104/kaigi_chukanhoukoku_1.pdf

 それ以降、私はそこで見つけた「暮らすように旅をする」という言葉にとりつかれてしまった。以下は、中間報告書11ページ「③ブランディング戦略(広報/観光/移住)暮らすように旅する観光」から引用しよう。

『富山県のブランディング戦略の中核にあるのも、ウェルビーイングだ。富山県を対外的にアピールする場合、富山県に来てほしいのは、「新しい価値を生み出せる人」である。(中略)そもそも、団体旅行で名勝旧跡を訪れる「従来型の観光」が世間的にも減少しつつある。そのような形で、いわゆる「観光客」として扱われたい観光客は激減している。ゆく先々の地域の人々の生の暮らしと触れ合い、「暮らすように旅をする」ことがトレンドともなりつつある今、観光客は一時的な県民として接せられるべきである。そのような観光客はコミュニティにも貢献できるはずであり、それがきっと魅力になる。すなわち、県民の生活こそが新たな観光資源といえる。』

 これは最近始まった「食の熱中小学校」の地方体験ツアーの考え方と、実に一致しているのだ。

 さて、国宝瑞龍寺で開かれた高岡熱中寺子屋の7周年記念講演会は、荒井公浩校長先生の挨拶に始まった。経済的に苦しくて来期以降継続できるのかまだはっきりしないという、率直なオープニングスピーチだった。

 全国の熱中小学校関係者や角田ゆうき高岡市長、青年会議所の皆さんなどが集う中、藤野さんの授業は、投資の話、お金に対する日本人の考えや海外との比較、といった興味深い話が次々と進んでゆく。生徒さん達からも活発に質問が出る。

国宝瑞龍寺での講演会。講演中の藤野英人さん

 講演会後の懇親会も、高岡熱中寺子屋関係者の心のこもった準備の中で熱量が継続する。 鏡開きに力が入り過ぎて、名酒「勝駒」のしぶきがゲコノミストの藤野さんの服に勢いよく飛んでゆく!

左から大久保昇さん、荒井啓公さん、藤野英人さん、山田玲子さん

 高岡熱中寺子屋は存続について悩む時の中で、今回の7周年記念講演会のように毎回の授業が生徒さんの熱量で盛り上がるようならば熱中小学校の意義は理解され、継続のためにお金はついてくるものなのだ。

 藤野英人さん、国宝瑞龍寺での10周年記念公演会にまた是非来ていただきたいですね!

藤野英人さんのインタビューはこちら:

「食の熱中小学校」はこちら:

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