第56章 立山さんの「笑うグリーンに福が来る」
前線が居座って、線状降水帯を作り、これまでに経験したことのないような雨が一気に川の氾濫を呼び、あっという間に床上浸水を起こす。
2020年、熊本県人吉球磨地区を襲った球磨川の氾濫は人吉球磨地区の情緒豊かな文化都市を一瞬にして流してしまった。
明治10年創業の熊本県人吉市鍛冶町の商店、古民家のカフェ、日本庭園、木造の製造所がある立山商店も大きな被害があった。その物理的な傷の修復が進んだが、新しいことに挑戦していた時間は戻ってこない。
立山商店5代目の立山茂さんは「やるせない気持ちも月1回 ‘ひとよしくま熱中小学校’ に行って、若い人たちの熱をもらって切り返し、支えられてきた」とおっしゃってくれた。これは、2019年の台風被害の後に開校した宮城県丸森町の熱中小学校丸森復興分校の、4年目になって聞く生徒さんの本音の声とも重なった。
奥様の立山まき子さんは ‘ひとよしくま熱中小学校’ の副校長先生として、まだまだそれぞれの会社の方が大変な時期に熱中学校の立ち上げを仲間の経営者にお願いしてくれた。日本茶アドバイザーでもあり日本茶育士として、小学校中学校、各地へ出向き日本茶の普及活動講座を行なっている。立山まき子さんは、話しながらもいつも笑って終わる。
お茶は会話しながら、笑いながら飲むのが美味しいのだ。
日本のお茶は10種類。熊本県は玉緑茶が日本一の産地で、その3分の1近くが人吉球磨地方で生産されている。ここ10年にわたり、ペットボトルが主流になったのはご存じのと通りだ。例えば我が妻は毎月我が家でお茶の稽古をしているというのに、我が息子の家にはキュウスがない。一方で海外でのお茶の需要は高まっているという。海外の観光客にとって、古民家調の喫茶室、素晴らしい樹木、石、苔の日本庭園がある立山商店は憧れの空間だ。
日本茶は長い年月をかけて日本人が暮らしの中に生かしてきた文化であり、海外の方々にどう理解していただくか?
そのために、日本茶のすべて、10種類の日本茶のテイスティング体験を交え伝統文化の理解も進めてきた。
簡便なペットボトルは、本当にコスト的な総合メリットがあるのだろうか?
水を船やトラックで運ぶエネルギーがいずれ問題になったとき、清流とたしなみがあって、人々がのんびりと水との交流を求めて、立山商店を訪ねてくる明日が見えるようだ。
災害のあった熱中小学校の姉妹校がある宮城県丸森町の方言で言えば、
ガンバッぺ 立山商店
ガンバッぺ ひとよしくま
ガンバッぺ 日本!
立山さんとのインタビューはこちら: