第55章 「中川 めぐみさんのコミュニケーション力」が仕掛ける新漁港の風景
いよいよ「食の熱中小学校」は9月27日に開校するが、10月第2回の授業を担当いただく中川めぐみさんは、海釣りの船からヒラリと岸壁に降りたようにインタビュー会場に現れた。数日前にも海釣りに出かけたという。
中川めぐみさんは、釣りアンバサダー / ツッテ編集長 / 株式会社ウオー代表取締役。
GREE・電通で新規事業の立ち上げ、ビズリーチで広報などに関わる。その間に趣味としてはじめた釣りの魅力に取り付かれ「釣り × 地域活性」事業で独立された。
各地で観光コンテンツの企画やPRの仕事に従事。また漁業ライターとして、グルメニュース、おでかけメディア、新聞などで、釣りや漁業を起点とした情報の執筆を行う。
初めての海釣りでその楽しみにハマり、釣りを繰り返すうちに、‘好きなことをしようと’ 独立されたのだ。
早朝、まだ明けぬ港を出港し、しばらく船が沖に進むと間もなく水平線に太陽が顔を出す。
自然に手を合わせて、波しぶきと風の中でご来光をありがたい思いで拝んでしまう。やがて船長さんが腕に覚えがあった場所で錨を降ろして、釣り道具の準備、餌の付け方を教えてくれる。
「釣りは「竿など道具を揃えて」「技術を習得して」こそ楽しめる趣味だと言われますが、探してみると「竿など特別な道具はレンタルして」「レクチャー&サポートしてもらえる」ビギナー向けのプランが日本各地にたくさんあるのです」とおっしゃる中川めぐみさん自身もなんと竿を1本もお持ちではない!
道具や仕掛けに凝った腕が自信の叔父さんが獲物を持ち帰るというイメージのある釣りの世界に、「そんなに頑張らなくても、釣れた魚は食堂に持ち込んで料理してもらったり、西伊豆町では地域通貨に交換したり、つまり釣れた魚をただ持ち帰るよりも、その地域の人たちと交流し楽しむ世界観の発見が面白いんです」とおっしゃる。静岡県・西伊豆町では市場の担当者が買い取り価格を査定し、査定額に納得したら、電子地域通貨「サンセットコイン」と交換してもらえる。スマートフォンや専用カードにチャージされ、西伊豆町内の飲食店や宿、土産屋、温泉施設、釣り船、ガソリンスタンドなど約150店舗で使えるそうだ。
釣りや漁業を通して日本全国の食、景観、人、文化などの魅力を発見・発信していって、漁師町を生き返らせたい、と心底思い、そしてできると信じている。
中川めぐみさんは、「食の熱中小学校」のツアーでは、既に今月北海道十勝・広尾町の昆布漁に、11月の和歌山県すさみ町の伊勢海老漁ツアーも引率の先生として参加する。
すさみ町の元漁師だった岩田勉町長(第49章参照)のカツオのケンケン釣りは、たった一人で4本の長い竿を引っ張って船を移動しながら、船の扱いとカツオとの戦いだったという。一日中大海に一人、天気、風、汐を読みながら勝負する漁師さんの孤高の世界。
中川めぐみさんは、そうした孤高のプロたちの心にスルリと入り込んで胸襟を開いてもらうことができる ‘コミュニケーションの達人’ なのだ。
富山県出身の中川めぐみさんが注目しているのが、富山湾の資源管理だ。白エビなどの漁法や資源管理、魚の品質にこだわった獲り方をする漁師さんたちを ”推し漁師“ と呼んで応援している。
そうした漁師さんを発見し、消費者と楽しく遊びながらつながること、そして何よりも美味しく食べることが私たちができる漁業者への応援なのだ。
中川めぐみさんのインタビューはこちら: