第54章 松田智生さんは「新プラチナキッズ世代」の旗手

 三菱総合研究所主席研究員、高知大学客員教授の松田智生さんは東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。専門は地域活性化、アクティブシニア論。

「逆参勤交代構想」で地方と都市の人材循環を提唱し実践する、地方創生分野の第一人者といわれる。2017年から提唱する「逆参勤交代」は首都圏の企業社員を地方にて期間限定でリモートワークさせるしくみで既に17自治体で実践してきた。

 一般社団法人熱中学園は熱中小学校での学びと交流の機会を使い、2020年以来内閣府地方創生室の ‘関係人口拡大’ プロジェクトを受託してきたが、松田智生さんとは越知町、小林市、琴浦町の熱中小学校での授業や各種プロジェクトをご一緒するなど ‘戦友’ の関係だ。今回東京で開校する「食の熱中小学校」では、月一度の日本の食の講義だけではなく、オプションとして各地の熱中小学校が受け入れ先になるツアーを企画している。

 松田智生さんの「明るい逆参勤交代」に近い考えで食を通じたカジュアルなツア―バージョンを企画したことで、松田智生さんからノウハウを得ようと教頭先生に就任いただいている。

松田智生さんの著書。江戸時代の参勤交代を逆手にとった持論は実践に裏打ちされている

 一方で、コロナ禍を契機に国や地方自治体が推進してきた「ワーケーション」そのものはどうだろう。実施者の満足度は高いといわれるが、部下を参加させる立場の経営幹部はワーケーションをどう評価しているのだろうか?

 松田智生さんの「月刊事業構想」への寄稿によれば、経営幹部向けに実施したアンケートでは、従業員1,000実施人以上の企業で実施率は1割。今後の見通しは『普及しない』が7割という厳しい結果になった。

「このままではワーケーションは、第二のプレミアムフライデーになりかねない。リゾートでリフレッシュした、サウナで整った、だけでは部下を参加させる動機にはならず、従来のバケーション型に代わる目的・動機づけ・費用対効果の見える化が必要という視点です」

 松田智生さんは、地域の人が交流するコミュニケーション、地域に貢献するコントリビューション、そして地域の魅力や課題を学ぶエデュケーション、の3つが含まれたものこそ企業が働き方改革や社員の視野拡大の為に実施すべき「真のワーケーション」と説く。

 我が国の働き方や少子化対策など、国は企業主導に期待し、企業もトップダウンで実施しようとしてもそもそも多様性を重んじる企業風土が乏しいのでは継続的な変革は難しい。

 企業に勤めてもやがて組織を離れ、自営業者、あるいは個人事業主として独立するとき、日本の大多数の一次産業の世界の人たちと同じ立ち位置になる。

 その時に気が付いてからでは遅すぎる。ぜひ「逆参勤交代加」や「食の熱中小学校の地方ツアー」等の非日常の ’旅‘ に参加して発想の転換を経験していただきたい。

 2022年5月21日、ひとよしく熱中小学校授業後の記念撮影第1列中央が松田智生さん

 松田智生さんご自身は首都圏に生まれて学び、地方にはいわゆる帰る ‘田舎’ が無いのだが、そうした若者がどんどん増えている。松田さんを慕い、首都圏の企業に就職せず、社会的な仕事で起業する若者も目に留まるようになってきた。SNSを通じて彼らが世代を越えてネットワークで助け合い、かつ既存の企業内管理者や社員が外部のエネルギーを使って「新しいワーケーションとしての逆参勤交代に」目覚めてくれたらと思う。

 三菱グループのシンクタンク機能である三菱総合研究所はいわば国政のアドバイザーであり、松田智生さんは「新プラチナキッズ世代」の旗手でもある。組織の内外で‘独立自尊の個人’が尊敬される社会を目指す若い世代が松田智生さんの背中をじっと見つめている。

松田智生さんのインタビュービデオはこちら:

「食の熱中小学校」のWebサイトはこちら

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