第49章 岩田勉すさみ町長の「老人たちと海」

 武蔵野美術大学の山崎和彦先生、岩田勉すさみ町長との対談ビデオ(第15章参照)から6か月余りのうちに、岩田勉さんにはすさみ町の町長選挙があり、私には内閣府地方創生室の「食の熱中小学校」の補助事業採択があって、お互いに新しい環境下でのインタビューとなった。

 今年も一般社団法人熱中学園はささやかなスポンサーになり、和歌山県すさみ町で武蔵野美術大学との共同研究の場を提供して2年目の活動に入る。

 11月3日(金)〜 5日(日)に行う「食の熱中小学校」のすさみ町ツアーは準備も始まり、武蔵野美術大学の修士の学生さんたち(社会人で学んでいる方たち)とのコラボも期待されている。

岩田勉町長が漁師時代に乗っていた船。一人で遠洋まで行ってカツオのケンケン漁をやっていた。今、船の数は最盛期の5分の1くらいになったそうだ

 シーラというウナギを大きくしたような獰猛な魚がいる。私は高知沖で大きな鯵を外洋で釣りあげて、最後に海面近くでシーラの群れにさらわれる経験をしたことがある。シーラがかかっても、傷みやすいこともあって、なかなか流通に乗せることができない魚だ。

 岩田勉さんが漁師としてケンケン釣りで生計を立てていたころからは大きく衰退したすさみ町の漁業だが、サステナビリティー(持続可能性)観光として生活していけるしくみの開発がどのようなものになるのか、岩田勉町長の最後の挑戦が始まった。

 獲れている魚を流通させて収入とすることは漁獲資源の持続性としてはいいテーマだが、それで収入が入るしくみがないと、生活、経済を伴った持続性がない。

 宮崎県小林市のトマト農家に小川ファームというトマト農家がある。完熟まで収穫せず、きめ細かなメッセージで私の周囲の東京の上客を直販で掴んだ。

 小川紘未さんから、トマトの苗が届くこともあった。トマトを売るのに、お客さんに苗をあげるのはどうなのだろうと思うのだが、これがなかなかプロのようには育てられず、かえって技術力を感じてしまう。

すさみ町の役場には大漁旗が大切に保存されている。岩田勉町長、右は原口唯之副町長

 果たしてすさみ町の漁業は顔の見える漁師さん達の路線で行けるだろうか?

 高齢化率48%(65歳以上が48%)という町では岩田勉さんも含めて高齢者がもう一度常識を超えて漁業に取り組むことができるのか? 狩猟型の漁業の限界はわかっているが、なんでもかんでもSDGsだ、サステナブルな活動だと言っても、沿岸漁業で生活ができる環境を創ることなくして高齢化した町の漁業は継続できないのだ。

 岩田勉町長が、そのためにこれからトライしようとしている企画の一つが「漁師小屋」だ。

 冷凍技術の進歩をとらえてこれまで生かされなかった魚の流通を考える。観光客でも使える冷凍庫付き魚流通の拠点の計画を考えているそうだ。

「食の熱中小学校」のすさみ町ツアーはこうした深刻な日本の漁業生産者と消費者である首都圏の人たちとがざっくばらんに話し合える機会を現場で提供してゆく。

 岩田町長自ら漁師町を案内し、伊勢海老漁に同行する密着ツアー企画はとってもユニークで、これまでも武蔵野美術大学関係者を始め多くの人たちが岩田勉町長の網にかかってきた(笑)。

 岩田勉さん、お互い、時間がありませんね。

岩田勉さんのインタビュービデオはこちら:

「食の熱中小学校」のすさみ町ツアーの情報はこちら:

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