第42章 中阪雅則さんの ‘夢をかなえる熱中の流儀’
世界遺産高野山の麓の町として、和歌山県かつらぎ町は観光、農業、そして大阪の通勤圏という環境を生かしてバランスの良い成長を目指しているユニークな町だ。
和歌山県上富田町にある紀州くちくまの熱中小学校に通うのには時間がかかりすぎるという生徒さんの声を拾い上げる形で、中阪雅則町長は1年前に紀州かつらぎ熱中小学校を誘致し、ご本人曰く ‘いい感じの世代間交流のしくみになってきた’ ところだ。
中学生から平泳ぎで優勝経験を重ね、オリンピック代表の候補選手になったこともある中阪雅則さんにとっても、体力、気力とも第1期目の町長生活は半端な活動量ではない毎日のようだ。
SNS、メディアの活用も功を奏して、大阪地方からの子育て世代の流入に成功し、町は人口減に歯止めがかかったという。
私は、中阪雅則さんの物事を進めるスピード感からてっきり民間ご出身と感じていたのだが、海南市という近隣の役所のキャリアだった。
東京で9月に開校する「食の熱中小学校」は座学に加えて、オプショナル授業として全国の食材の生産地を訪問し、消費者と生産者が交流する事をめざしており、その第一号としてかつらぎ町で「持続可能な食と農を考える林間学校 in 高野山」が、2023年9月16日(土) ~ 9月18日(月・祝) に開催される(費用は60,000円、飛行機をご利用の方は関西国際空港まで、新幹線の方は日根野駅までは自費、関西国際空港および日根野駅より往復送迎あり。詳細はこちら:https://shoku-no-necchu.com/tour1/ )。
弘法大師・空海によって開かれた仏教の聖地、高野山。仏教とともにある日本古来の伝統食 精進料理を味わっていただき、高野山のお寺で宿坊を体験し、精進料理をいただくことで、日本伝統の食文化が持つ持続可能性について学ぶプログラムだ。
かつらぎ町新城地区で栽培し、ブランド化を狙う高原米 ”新城米”。新城米の収穫を体験することで農業の担い手不足や収益の確保など、農家の方に直接お話を伺い、農業を持続させるための取り組みについて、中阪町長自身も加わって意見交換もしたいという。
昨今、SDGs が叫ばれる中ヴィーガン食に注目が集まっているものの、ネットに掲載されているヴィーガンレシピを作ろうとすると、輸入食品に行き着いてしまうのが現実だ。
だが精進料理は日本の伝統の食文化であるため、使われる食材は日本で獲れるものばかり。いま一度、精進料理に焦点を当てることで、輸入食品に頼らない、国内生産・国内消費が根付き、本当の意味で持続可能な食文化の形成を学べるのではないか?
このプログラムは、かつらぎ町の豊かな農業資源、高野山の歴史的文化としての食という新しい切り口で我々日本人の心身の健康を食文化の歴史と原点から思い起こさせてくれるような気がする。
6月の集中豪雨で、紀州かつらぎ熱中小学校のある新城地区の田んぼには水浸しになって農家にも被害が出ているが、また日照とともに稲はスクスクと立ち上がっているそうだ。
「川の氾濫で、上流からいい自然の肥料も入ったでしょう」「首都圏の人に ‘根性米’ を食べていただける」と明るく笑う中阪雅則さんはやはり、金メダルを追いかける人だった。
中阪さんのインタビュービデオはこちら: