第33章 黒田 泰裕さんの「つまらない成功より面白い失敗をしよう」
5月21日の熱中小学校丸森復興分校は、宮崎県日南市から黒田泰裕さんを先生にお迎えした。
日本の商店街がシャッター街化の一途を辿っている中で、関係者が訪れる商店街再生の聖地、それが宮崎県日南市の油津(あぶらつ)商店街だ。
黒田泰裕さんは日南商工会議所事務局長を経て60歳の定年で(株)油津応援団を設立し、日南市油津商店街の活性化を担ってきた。
曰く、人口が一人減少すると年間140万円の消費が消え、やがて企業の支店、病院、そして小中学校の移転や統廃合の話が起こる。その都度雇用が消えてまた経済が縮小してゆく。商店街のシャッター化はどこの町でも‘もう手が付けられない’と感じてしまう光景だ。
(株)油津応援団を3人で設立してからというもの、ご本人に言わせると「失敗を繰り返して来た歴史」だそうだ。
しかし、廃スーパーマーケットや空き商店の再生、若者の取り込みの結果、今では13社のIT企業が150人も住み付き、新しい若い家族の子供たちのための保育園も再生させた道筋は失敗の中から学び続けた大きな成功だ。
今、70歳になって「奇跡を起こすのは、いつもマイノリティー。それも覚悟を決めたマイノリティー、何事も10年やってみないとわからない」とおっしゃる黒田さんは、根っからのカープファンだ。
昭和世代にとっては、東京本拠の読売ジャイアンツが全国のプロ野球ファンを席巻する中、毎年油津駅近くの天福球場でキャンプを張る広島カープは黒田さんにとっては大メジャー球団だった。
黒田さんは「日本一のカープ駅をつくる会」代表として駅やホテルから球場までの広島カープ色である赤い歩道と、油津駅の赤い駅舎実現にクラウドファンディングに挑戦する。
弱い時も強い時も、いつでも全国制覇まであきらめることなく応援し続ける姿が、やがてフォロワーを生んで日南線の南郷駅が「西武ライオンズのブルーの駅」になり、木花駅が「ジャイアンツをイメージしたオレンジの駅」に変身してJRの赤字ローカル路線である日南線を盛り上げることにつながってゆく。
フロントランナーの道を、それも定年後も走り続けることは、失敗を繰り返してもまだ前に進んだり撤退したりの連続だと想像するとしんどいものだ。その、神経をすり減らす時間を、ご家族や仲間の励ましの中で進んだ10年の道のり。
そこにロマンと彼に続く若い挑戦者への励ましと、愛情を感じるのは私だけではないだろう。
黒田泰裕さんのインタビュービデオはこちら: