第8章 ‘クラダシチャレンジ’ は関藤竜也さんの底力そのものだ
(株)クラダシの関藤竜也さんにお会いしたのは 2022年10月、和歌山県すさみ町だった。
関藤さんも私も、別のプロジェクトですさみ町の岩田勉町長とお付き合いがあって紹介いただいた。私は彼の話を聞いて ‘面白い、必ず成長する企業であり、リーダー’ だと直感した。
原油価格の高騰や円安の影響で、食品価格の値上げが相次いでいる中にあって、大手メーカーの食品を安価な価格で販売し、急成長を遂げている。「Kuradashi」が扱っている商品の多くは、賞味期限がまだ残っていたり、食べられるにも関わらず、問屋からメーカーに返品されてきた商品やパッケージの汚れなどで出荷できず、いずれ破棄せざるを得ないような商品だそうだ。売上の一部は、クラダシが自ら社会貢献活動を行うために設立したクラダシ基金や、環境保護や動物保護、医療支援などを行う社会貢献活動団体に消費者が好きな寄付先を選んで支援することができる。そのため、安価でも大手食品メーカーのブランドイメージも傷つかない。かえってよくなる可能性が高い。
私がこの「Kuradashi」に注目した理由は、価格やビジネスモデルだけでなく、食品ロス対策への参加感、そしてソーシャル活動を支援する社会貢献型インターンシップ ‘クラダシチャレンジ’ などに使われるクラダシ基金への寄付が一体に組み込まれている点だ。‘ふるさと納税’ がブランド肉など、価格的なお得感だけで成長しがちなことに比べて新鮮なプログラムである。
関藤さんも地方の生産者支援に関心があったので、とかち熱中小学校が企画していた、「フードバレーとかち食の熱中小学校」に教諭としてお招きした。
今や食材の価格は消費者が食べるまでのコストの20%程度しかないのなら、加工、流通、料理、廃棄までの中で第1次産業を見ていかなければならないのだ。
イベントの前日から十勝入りして一日同行させていただいて、関藤さんが地方の生産者のマーケティングを助け、革新者がヒーローとなる ‘人’ を探していることが良くわかった。
「フードバレーとかち食の熱中小学校」では、総合司会の北村貴さん((株)グロッシー代表取締役)のリードで、第1部では関藤竜也さんがフードロス問題、宮川順子さん(一般社団法人日本味育協会代表理事)が冷蔵庫の中を見て食品を生かす料理法、幕別清陵高校活動発表コーナー(高校生のSDGs活動報告)、地元幕別町のオーガニック農家である小笠原農園の小笠原保さんの発表があり、第2部はトークセッションとして関藤竜也さん、小笠原美奈子さん(小笠原農園)、保志弘一さん(広尾町の昆布漁師)の生産と流通問題についての議論になった。関藤さんは「Kuradashi」の安価な価格や寄付できる魅力だけでなく、生産者の商品のマーケティング支援企業になりたいこと事を強調していた。
さて、私がすさみ町で知ったユニークなプログラムである社会貢献型インターンシップ ‘クラダシチャレンジ’ だが、首都圏を中心に全国のフードロス問題や地方創生に興味関心のある学生さんを公募して、すさみ町に派遣し、漁師の船で共に漁をして、収獲物を道の駅で販売してもらう。そして、売れ残ったり、棚に乗せられない半端な魚の無駄をどう少なくできるか、アイデアを考えてもらうといった内容だった。
手が欲しい地方の1次産業などへの学生派遣は生産者のニーズにかなっており、学生にも学びや仕事の経験の機会にもなる。
都会の喧騒やコロナ禍にいた若者は、自然と人情の中で生き生きとしてくる。
‘クラダシチャレンジ’ は地方の活性化、首都圏と地方との新たな関係性を若者に提供していると思った。また、参加学生の旅費や滞在費、食費等はクラダシ基金から拠出しているという。
生涯教育で地方を元気にすることを目的にし、首都圏の社会人向けに、地方でのインターンシッププログラム ‘ふるさとみつけ塾’ を実験してきた熱中小学校との接点があると考えて、各地の熱中小学校の食関係のプログラムと、‘クラダシチャレンジ’ が相互に生かせる関係を模索してきたいと思っている。
日本の安全保障、環境問題からも食の自給問題が課題となってきた。
食料の輸入が出来なくなった時の兵糧攻めの危険を考えるとき、「食財、商品を捨てないこと」、「農業などの1次産業をもう一度守ること」、「それを消費者に教育してゆく事」、熱中小学校がある地方の自治体と ‘食’ をテーマにした教諭を探し、新しいプログラムを考えていこうと思う。とかち熱中小学校が主催した ‘フードバレーとかち食の熱中小学校’ の成功を見てそう思った。
関藤竜也さんのインタビュービデオはこちら: