第7章 ‘かつぎたくなる十勝のラガーマン’ 長澤秀行さん

 とかち熱中小学校の長澤秀行校長との出会いは、10年前。2012年の夏に約1か月、猛暑で東日本大震災後電力制限の首都圏から涼しいサテライトオフィスを実験しようと、帯広に ‘十勝コロボックル・サマーオフィス’ を立ち上げ1か月帯広市に滞在していた時だ。 帯広畜産大学に長澤秀行さんという我が国最年少の国立大学長がいるというので、興味を持ちアポイントして会いに出かけた。初対面の話は、ラグビーを ‘まだ’ プレイしていて、馬が大好きというので乗馬をかじった私と ‘ウマ’ が合ってから、長いお付き合いになった。

長澤さんは帯広畜産大学生が企画した食のセールスマンでもある

 長澤さんを一言で表わせば ‘かつぎたくなる人’ である。

 長澤さんは2008年に帯広畜産大に着任後学長を辞められてからは、とかち財団の理事長としてオール十勝の産業育成に努め、そして帯広駅前のビル1階に ‘LAND’ という企業支援を兼ねたシェアオフィスを開設した。とかち熱中小学校を運営する「一般社団法人北海道開拓機構(理事長:木野村英明さん)」の事務所はこのLAND内にある。

 そして昨年帯広畜産大学の「国立大学法人北海道国立大学機構」への統合時に学長として再度登板され、現在に至る。

 とかち熱中小学校(副校長:北村貴さん、中川裕之さん、事務局長:亀井秀樹さん)は2017年4月、全国で5番目の熱中小学校として十勝の更別村で始まった。その後、十勝の19自治体の実施希望場所を回って開催する形に進化できたのは、長澤さんの十勝財団理事長、大学学長への信頼があってのことだった。

とかち熱中小学校の事務局がある、‘LAND’ にて 長澤さんをかついでいる仲間たち

 十勝は食料自給率1,100%という我が国有数の農業、加工の集積地として「フードバレー十勝推進協議会」とも連携して ‘食’ に特化したプログラムにも熱心に取り組んできた。

 2023年1月29日には、幕別町で地元の幕別清陵高校が取り組むSDGsの活動発表や地元の農業(小笠原農園さん)、漁業者(広尾町の保志さん)、熱中小学校の教諭は宮川順子さん (一般社団法人日本味育協会 代表理事)、関藤竜也さん((株)クラダシ代表取締役社長)、北村貴さん((株)グロッシー代表取締役)、そして長澤校長が参加して「フードバレー十勝食の熱中小学校」が開催された。

 長澤さんは、これまでの食材と料理のマッチングといったテーマに加えて、十勝での供給、流通、食の教育も含めた総合的な教育活動を思い描いているようだ。

 昨今の肥料、燃料費、流通経費の高騰と環境の激変で農業生産者は皆厳しい環境に立たされている。

 大手の食料品メーカー等の値上げラッシュの中で、材料を供給している立場に価格転嫁がされないと、十勝は大きな痛手を負うことになる。付加価値を追求する為にもエシカル消費につながる行動変容のための学び直し講座や、フードロス、オーガニック、環境などの問題に取り組む革新者を巻き込んだ活動を意図しているようだ。

 帯広畜産大学の学生による商品開発にも熱心で、昨年10月には上川大雪酒造株式会社と「学生の酒造りプロジェクト」による純米吟醸酒「碧雲」を発表、飲み会の席には必ず持参されて売り込んでいた。

 純米吟醸酒「碧雲」は帯広畜産大学学生生活協同組合で販売され、売り上げの一部は畜大の教育活動に活用されている。

 畜大の学生の7割が北海道以外からの入学で、その卒業生をいかにして定着させ、あるいは戻せないか?

 お会いすると、いつもその話になって時間がなくなってしまう。長澤さんの学生思いは、畜大でも、とかち熱中小学校でも感じることだ。

 お会いすると必ずまだフォワードとしてプレーを継続していたラグビーの話題が楽しみだったが、最近ラグビーを辞められたと聞いて運動不足にならないか、ストレス発散の機会がなくなるのではないか?と少し心配だ。

長澤秀行さんのインタビュービデオはこちら:

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